嘘恋シアター


目的地にたどり着いたらしい橋本くんが口を開く。

「佐倉」


橋本くんが呼んだのは恵ちゃんだ。


なんだ。
無駄にドキドキしちゃった。
期待していた自分が、すごく恥ずかしい。


だいたい、橋本くんがわたしに用事なんてあるわけない。

それに恵ちゃんは超絶かわいい、とは言わないけど某国民的アイドルグループなら普通に入れそうなくらいキレイ。

用事をつくってまで話しかけたい女子だ。


「何?」

本当に何事もなさそうに振り返る恵ちゃんがちょっぴりうらめしいし、だいぶうらやましい。


うん、わたし、前世はラッパーかもしれない。


「…」
橋本くんの顔がいつもより赤い。


…え?
これは、恵ちゃんに告白パターンとかそういうの?
そしたらわたし、スゴくスゴく恥ずかしい。
なにを、思い上がってるんだ。


叶いもしない恋心を親友にいっちょマエに話して。
少女漫画にでてくる主人公のようなことをして。


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