光の思い出 - happiness&unhappiness -
『あたし、戸田くんのこと気になってるんだ。クリスマス会に参加するらしいからそれをチャンスに近付きたいと思うんだけど、一人で参加するのはなんか勇気なくて……。だから有美、一緒に参加してくれない?』
手を合わせてそうお願いをされたのは、ちょうど参加者を募っているときだった。
友達からの頼み。別に断ることだって出来たけど、結果は今の現状を見てもらえば分かる通りだ。
友達を巻き込まなければ踏み込めない恋なんて、やめてしまえばいいのに……。
そんな思いを何度も押し殺して今ここにいる。バカ野郎はどっちだ。
「ぷはー! 歌い過ぎて喉カラカラだよ~」
存分に歌って私の隣に座った透子は、豪快にコーラを喉に流し込んだ。
アイドルの曲を歌って戸田くんにアピールしていたつもりなんだろうけど、その飲みっぷりはまるでビールをがぶ飲みするおじさんそのものだ。意味を為していない。
その姿を横目で見つつ、テーブルに並んでいたポテトを口に運び入れた。冷めてしまっている上に、油でベトベトしている。
部屋にはさっきと打って変って、しっとりとしたバラードが流れていた。2年前に流行っていた曲。男性歌手が歌った男目線の歌で、彼女を大切にするから、みたいなニュアンスが含まれた歌だった思う。
誰が歌っているのかと思って見ると、戸田くんが真っ直ぐテレビの画面を見て歌っていた。隣を見るとやっぱり、そんな戸田くんに向かって透子の視線が一直線に伸びていた。
「かっこいいよねー。歌ってる姿もやっぱり良い!」
声の調子を抑えているつもりなんだろうけど、顔が完全に緩んでしまっているので気持ちはバレバレだ。部屋が暗いのが幸いだろう。