俺が媚薬を隠し通す
「 先生 私を落とす気なの!?ひど~ 」
「 びどかないね!降りろって!」
「 やぁ、だ!好きだもん、先生に本気なんだからぁ 」
くそっ 襟つかみやった…
「 わか、わかったから一瞬降りろ、離れろって!」
お? 意外に聞き分けいいじゃないの、素直だな。
葉山は俺の言葉にすぐさま膝からストンっと降りた。
だが、今時の女子の俊敏さと、頭の回転の早さに俺は不意をつかれたんだ。
葉山が降りてすぐ、俺はシャツの襟を直そうと両手を襟にあてた時だった。
その手首を掴んだ葉山の一瞬が、俺の視界に溢れたんだ。
柔らかく、葉山の唇を感じ、俺ではなく、葉山のまつ毛が閉じていた。
葉山が俺にキスを…
不意をつかれた…
唇がゆっくり離れて、葉山を視界に捉えた時の葉山は女だった。
少なくとも俺にはそう見えた。
「 私、本気だから。先生が好きなの。だから、諦めない… 」
葉山……
葉山は俺の手首を離して保健室を出て行った。
本気だからと捨て台詞を投げて…
「 なんなんだ、アイツ… 」
正直、驚いてしまって言葉がない。
俺は当たり前に大人だ。なのに、揺らいでいるこの心臓の激しさはなんだ?
相手はまだ17歳の小娘だ。
だが、葉山は女だった。
もう、頭がまわらず 密かに持ち歩いている媚薬を手に見つめる。
本来、媚薬などを使うべきものではないんだ。
人の心が複雑かつ単純だからこそ味がある。
どうして俺は媚薬にこだわるんだ?
ここの生徒に試しても、俺が好意を持ち与えるかどうかすらわからないのに…
それから数日、いつもと変わらず葉山はやってくる。
俺にキスしておいて、平然とした顔でやってくるんだ。