雪の足跡《Berry's cafe版》

「も、もしもし」
「ユキも学習能力があったんだな」
「何よ、それ」


 着いたって、ちゃんとメールよこしたから、と八木橋は言った。八木橋の声の後ろからガヤガヤとした音が聞こえる。わあ、だの、やったー、だの騒がしい。


「決勝、ちゃんと入賞したから」


 多分、決勝戦の結果を発表しているところだと思った。


「ユキが頑張って、ってメール入れたからじゃねえぞ?」
「私だって、私のせいで駄目になった、って言われたくなかったから!」


 沈黙する。


「……おめでと」
「ああ……」
「あと、ありがと」
「何が」
「泊めてくれたこと」
「しょうがねえだろ?」


 しょうがない、しょうがなくて泊めたんだ。私は、母が話したいって言うから代わるね、と保留ボタンを押した。部屋を出て階下のダイニングに行く。八木橋さん、と言い、母に携帯を渡した。


「こんにちは、ユキの母です」


 心なしかワントーン高い母の声。八木橋と話をするのが嬉しいみたいだった。若い頃の父を重ねてるのかもしれない。

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