雪の足跡《Berry's cafe版》
「それはそうだけど」
母が何故私にも作らせようとするのか分からなかった。私と八木橋がそういう関係だと誤解してるのか、私のを引き立て役にするつもりなのかとも思った。
土曜日になり、私は朝からチョコ作りを始めた。しかも早朝。母に作っているところを見られたくなかった。キッチンの片隅には既に焼き上がった天板2枚分のブラウニーがあり、私を挑発してるようにも見える。これからカットして包むんだろうけど、一人にあげるには相当な量。日本酒は箱に包装されていた、一升瓶を多分2本。
本を見ながら材料を計り、混ぜ合わせていく。日本酒の他についでだからと自宅にあったワイン、ブランデー、ジン、コアントローのトリュフも作る。チョコは本当はビターと本には載ってるけどミルクチョコにした。このところの残業で疲れていて甘いものが恋しかったから。一度冷蔵庫で冷やし固めてからチョコでコーティングする。欲張ってたくさんの種類を作ったから私も相当な量のトリュフが出来上がってしまった。まあ、すぐに悪くなるものでもないし、と思いながら摘む。甘くて口溶けの良いトリュフに手が止まらない。先週八木橋と食べたロールケーキみたいにふわりと溶ける。ふと恥ずかしそうに満足そうに食べる八木橋の顔が浮かんだ。
「こんなにあるんだし、おすそ分けしようかな」
形の良いものをより分けて容器に入れておく。近くのショッピングモールが開店するのを待ち、ラッピングを買う。自宅に戻り母に見つからないように部屋で梱包する。ピンクはNGという本に従って黒と茶をを基調にした渋い包装にした。