雪の足跡《Berry's cafe版》

 翌日、朝早くに荷物を積み込み家を出た。母に、八木橋さんにくれぐれも宜しくね、と言付けされブラウニーを渡される。私の耳にはベリー色のフープピアス。雪のピアスと迷ったけどこっちにした。八木橋の困ったような表情をさせてしまわないように。高速を下りて路肩でチェーンを巻く。がたぼこと車が振動するたびに輪に掛けられた石やビーズが揺れ、こそばゆい感覚にドキドキする。八木橋のくれたピアスはまるで八木橋が私の耳に触れてるみたいで。引き出しから出さなければよかったと後悔した。

 9時過ぎには駐車場に着き、八木橋に電話する。品物を渡したいから何処に行けばいいか尋ねると、そこにいろ、とぶっきらぼうに言われて通話を切られた。5分としないうちに駐車場に現れた赤い八木橋は、酒とブラウニーの入った袋を片手に持ち、私の板とブーツを抱える。


「板ぐらい自分で持つわよ」
「……アホ」
「荷物持たせるために電話したみたいじゃないっ」


 八木橋はズカズカとゲレンデへと歩き始める。私は慌ててウェアの入った鞄を持ち、八木橋の後ろを追い掛けた。八木橋の背中を見ながら歩く。スクール小屋の前に袋を置き、私の板をレストハウス前の置き場に立てかける。


「……昼飯、一緒に食うか?」


 ブーツの入った袋を差し出されて、受け取る。


「た、食べてやってもいいわよ」


 八木橋は、じゃ上のロッジで、と言うと手を挙げてスクール小屋に入って行った。

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