雪の足跡《Berry's cafe版》
翌日も仕事からまっすぐに帰宅してパソコンを立ち上げる。今日は本選。明日準決勝、明後日が決勝になる。
ネットにつないで愕然とした。上位から八木橋の名を探すが、見当たらない。1ページ目には無く、次の画面へとスクロールする。
「え……」
ようやく八木橋の名を見付けたのは2ページ目も下の方、59位だった。昨日の予選では10位だったのに何故こんな下の方に……?
「怪我……? 風邪……?? どうして」
50近くも順位を落とした。何かあったんじゃないかと心配になる。
「し、試合には出場したんだから、大きな怪我じゃないよ、きっと……」
パソコンの画面を見ながら自分に言い聞かせる。大丈夫、きっと大丈夫だって。ふと、あの時の八木橋の姿が蘇る。板泥棒を追って怪我をした八木橋。痛いのを堪えて屈み、私の手を払いのけた。そして帰宅後の通話で、心配するなと母に伝言を頼んだ八木橋。本当は辛い癖に我慢したんじゃないかと思った。
携帯を取り出し、八木橋の番号を呼び出す。電話するかどうしようか迷う。電話しても突っぱねられたら、何を話せばいいのか分からない。それに“覚悟”がちゃんと出来てないなら掛けちゃいけないと思った。戸惑わせたくない。せめて足手まといにはなりたくない。