雪の足跡《Berry's cafe版》

「早くご飯食べて、用意をしなさい」
「用意?」
「スキーに行く用意。車に積んでおいて、明日仕事を上がったら真っすぐに向かえるように」
「どこに……」
「決まってるでしょう?」


 八方尾根スキー場。技術選の会場。今、八木橋のいるところ。


「……うん」


 母は食事が済んだら、泊まるところを探すわね、と言ってくれた。


「母さん」
「何?」
「……ごめんなさい」


 何故謝るの、変ね、この子は、と笑う。


「……だって、ひとりにするかもしれない」


 こないだも言ったでしょ、とっくに覚悟は出来てるわよ、と母は笑う。もういいから食べなさい、と言われたけど箸を取る気にはなれない。


「……ちゃんと親孝行もしてないのに」


 馬鹿ねえ、ユキが幸せになることが一番の親孝行でしょう?、と母の声が震えた。


「母さん、今まで育ててくれてありがと……」


 それは披露宴で聞くから取っておきなさい、それにちゃんとプロポーズされたの? そっちが先でしょう??、と母は目頭を押さえた……。
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