雪の足跡《Berry's cafe版》

 菜々子ちゃんは、父親と私が会話してるのも気に入らないようで、パパ、パパ、菜々子のお口にパン入れて!、と食べさせるよう命令する。父親がパンをちぎって放り込むとべったりと寄り添って甘える。


「……菜々子ちゃんは八木橋さんとパパ、どっちと結婚するのよ??」


 コドモ相手に何をムキになる、と客観的に見てる自分がいる。でも“女”に変わりはない菜々子ちゃんに負けたくない。


「両方」
「日本は一夫一婦制なのよ。どっちかしか選べないの!」
「オバサンの意地悪! 菜々子が可愛いからっていじめてるでしょっ」


 菜々子ちゃんは泣く訳でもなく、勝ち誇ったように笑う。ムカついた。応戦する私にご両親は何かを察したのかもしれない、私と八木橋には生徒と先生以外に何か関係があると。助け船を出してくれた。


「じゃあ、八木橋さんに選んでもらうのはどう?」


 菜々子ちゃんは、パパが言うならそうする、と上目遣いに父親に甘える。


「八木橋さんにお姉さんか菜々子を選んでもらって、菜々子がフラれたらパパのお嫁さんになる。菜々子もそれならいいだろう?」


 菜々子ちゃんは満面の笑みで父親に微笑みかけた後に私を一瞥した。ふん、と鼻を鳴らし再び父親に食事をさせろと甘えていた。

< 167 / 412 >

この作品をシェア

pagetop