雪の足跡《Berry's cafe版》

 その腑に落ちない朝食の後、会場入りした。レストハウス内に貼り出された八木橋の滑走順とゼッケン番号を確認する。名前を見ただけでドキドキした。八木橋がこのスキー場にいる。八木橋の滑る姿を見られると思っただけで胸が高鳴る。今日の決勝は2本。昨日一昨日の本選、準決勝、今日の決勝の点数を合計して順位は決められる。本選で大きく順位を落とした八木橋は40位まで順位を上げていた。上位入賞は無理だけど、最後まで応援しようと思った。

 1本目の試合会場に向かう。ゴール地点付近には人だかりが出来ていた。コース脇には駅伝大会のように個人名やチーム名ののぼり旗が掲げられている。


「……」


 異様な盛り上がりの中、最初の選手がスタートして滑り下りて来る。技術選、と聞いてフォームだけを競うのかと思っていたら間違いだった。30度以上ある急斜面をもの凄いスピードで下りて来る。知らない選手のその滑りに圧倒された。

 ゴールすると審判員達が一斉にジャッジする。持ち点はひとり100点、審判員は5人。最上と最下の2人の点数を除き、残り3人の合計が点数となる。つまりは300点満点。スタート地点のやぐらに設置された電光掲示板にその点数が表示された。その一人目の選手は245点。あれだけの滑りでスピードで、素人ながら辛い点数だと感じた。次の選手がスタートする。辺りの観客達が声を上げる。応援のラッパを鳴らす。耳を塞ぎたくなるほどの轟音。熱気。でも慣れてきたのか段々と気にならなくなる。徐々に八木橋の番が近くなる。胸が張り裂けそうになる。
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