雪の足跡《Berry's cafe版》

 ずっと一緒に滑りたい、そう思ってここに来たんだ。私は自分を奮い立たせて声を上げた。


「ヤギっ!」


 滑りながら叫ぶ。気付かないのか、八木橋は止まらない。



「ねえ、ヤギ! ヤギってば!!」


 悠々と滑っていた八木橋はようやくコース脇に向かい、端に止まった。私も並ぶように止まる。八木橋は俯くようにし、ストックでグサグサと雪面を刺していた。


「ヤギ……?」
「……ヤギヤギ言うな、アホ」
「聞こえてたんじゃない……」


 八木橋はストックでひと刺しして手を止める。そして、大きく息を吐いた。


「ヤギ?」
「……だから」


 怒ってる……?


「お前もいずれ“ヤギ”になるんだろ?」
「ヤ……?」


 息が止まる……。



< 180 / 412 >

この作品をシェア

pagetop