雪の足跡《Berry's cafe版》
足の上で重ねた自分の手の甲が震えてるのが見えた。テーブルを挟んでいるのはいつもと同じなのに、母と隔てられた気分になった。
「八木橋さんもユキも頭を上げて」
八木橋が頭を上げるのが横目に見えて一緒に頭を上げる。こんな娘ですけどこちらこそお願いします、と今度は母が頭を下げた。余所余所しい、至近距離なのにすごく遠く感じる……
。
その後は3人で乾杯した。八木橋が無事に決勝まで戦えたこと、私が八木橋と付き合うことになったこと、母は仏壇にも日本酒を上げた。おつまみと言ってた癖にたくさんの料理が並ぶ。サービスエリアで軽く蕎麦しか食べてなかった八木橋は豪快に食べる。母は作り甲斐があるわね、と八木橋を嬉しそうに眺める。母も八木橋もそこそこ飲んでいたけど、私は飲む気にはなれなかった。
日付が変わりしばらくして、八木橋に風呂に入ってもらう。母と私で後片付けをする。八木橋の寝る布団を敷く。母は八木橋が風呂から帰って来ると、おやすみなさい、ゆっくり休んでね、と挨拶して自分の部屋に入っていった。
私も風呂に入り、軽く体を流してパジャマに袖を通した。和室にいる八木橋におやすみなさいと言おうとして、襖の前に立つ。
「ヤギ、もう寝た?」
中から、いや、まだ起きてる、と声がした。
「どした?」
襖が開く。母が用意した来客用の浴衣を来ていた八木橋は、早く寝ろよ、と私の頭をぐりぐりと撫でた。