雪の足跡《Berry's cafe版》
「ユキさ、親父さんにそっくりだな」
「よく言われる」
「親父さんが産んだのか?」
「そんな訳ないでしょっ! 馬鹿ねっ!!」
「お前怒るとここにシワが寄るのな」
徐に八木橋の腕が上がる。その指が私の顎に触れた。
「ひゃっ……」
「な、何だよ??」
八木橋は慌てて指を離す。二人でそのまま黙り込んだ。さっきまで笑っていた八木橋は真顔になって私を見つめる。
「ユキ……」
八木橋の顔が近付く。目をつむると唇が触れた。ゲレンデでしたのと同じ優しいキス。それを何度か重ねていくうちに段々と深くなる。八木田橋の胸に手を沿える。指先で引っ掻くように浴衣を掴む。
「ん……っ」
私が少し声を漏らしたのを機に、八木橋が急に離れた。
「そんな声出すなよ、止められなくなるだろ」
「だ、だって」
「親父さんが見てんだろ。ここで裸になって足広げる気か??」
八木橋は顎で仏壇の方をしゃくる。遺影の父は笑っている。
「……早く寝ろ、アホ」
襖はピシャリと閉じられた。