雪の足跡《Berry's cafe版》
無理矢理、ご飯を口に入れる。味噌汁で喉に流し込む。食欲なんて無い。ただ、技術選後にわざわざ来てくれた八木橋に心配を掛けたくなかった。プロポーズされて沈んでる自分がおかしいと思った。八木橋も母も喜んでいるのに。
「お代わりもらっていいか?」
八木橋の茶碗を受け取り、キッチンに行く。望んでいた八木橋との関係。母を置いてまで一緒にいたいと思ってたのに。八木橋は相変わらずご飯を口に入れては漬物をかじる。
ご飯を食べ終えて食器をキッチンのシンクに置く。コーヒーをいれようとやかんを火に掛ける。ドリッパーに紙をセットして粉を撒いて、湯が沸くまでの間に洗い物をしようとした。
「俺が洗う。爪、傷付くだろ?」
背後に八木橋がいた。
「あ、うん……」
八木橋はレバーを上げて湯を出した。軽く流してからスポンジを手に取る。
「……最近」
八木橋が言いかけた。
「何?」
「最近っつうか、あれから雪の模様してないのな、爪」
「うん……」
八木橋は皿を洗う。私は何を期待しているのだろう……。