雪の足跡《Berry's cafe版》
お彼岸になり、週末に母を連れて墓地に行く。花、線香、団子を持ち、墓石の前に立つ。母が濡れたタオルで墓石を拭く間、私は水場に行き、花筒を洗う。水をいれて再びお墓に戻ると、母はタオルを持っていた手を止めて、墓石の側面を見つめていた。父や祖父母の名と共に命日が刻まれている。新しく彫られたばかりの父の名は痛々しい程に新しい。
「母さん……?」
また思い出してるのだろうか、会社からの連絡で病院に飛んで行ったときのことを。間に合わなかったことを責め、食事や生活面の健康管理が悪かったと自分を責めていた母。
「また、思い出しちゃった?」
母は、ううん違うのよ、と再び手を動かし始めた。
「ここに母さんの名も刻まれるのよね、父さんの隣に」
「うん。でもまだまだ先だからね。父さんの分まで長生きしなきゃ、私が父さんに怒られるもん」
「そうね、長生きして孫の面倒みなきゃね?」
母が意味ありげに笑い、私は顔が熱くなった。
「か、母さん!」
クスクスと笑い、ユキはホントにからかい甲斐があるわね、とタオルを置いた。花を差し、団子と水を上げる。線香に火を点し、上げて手を合わせた。
「ユキだっていずれは八木橋さんのお墓に入るのよ?」
「うん……」