雪の足跡《Berry's cafe版》

 僅か1分、結果は出た。うっすらと写る青いライン、説明書にある例と見比べる。多分陽性……。大きく息を吸う、吐く。そしてそっとドアを開けて、トイレを出た。

 部屋にいる八木橋を見る。八木橋は立っていたかと思うとベッドに座り、座ったかと思うと立ち上がる。落ち着かない様子だった。まるでテレビドラマの中で分娩室の廊下で赤ちゃんの誕生を待つ父親のような姿。


「ヤギ……」


 私に気付いた八木橋は私を見た。どした?、と心配顔で私の顔を覗き込む。


「あ……た、多分、出来た……かも」


 自分の声が震えるのが分かった。


「ごめん……ね……」
「なんで謝るんだよ」
「だ、だって、安全日って言ったのに」


 立っていた八木橋は歩いて来て、私を緩く抱きしめた。


「ヤギ……?」


 そっと私の背中を撫でる。謝るなよ、謝るな、と何度も何度も呟く。


「お、怒ってる?」
「なんで怒る必要があるんだよ」
「呆れてる?」
「なんで呆れる必要があるんだよ」
「だって……」


 八木橋は私から離れてベッドに腰掛けた。俯いて髪をボリボリと掻く。


「俺、子供好きだし」

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