雪の足跡《Berry's cafe版》
ふと、ゲレンデで子供達に教える八木橋の姿を思い出した。優しく丁寧に教えてる姿。ひょっとして喜んでるのかもしれない、予定外の妊娠。
「女の子ならいいなあ」
恥ずかしそうに頭をブンブンと振ったかと思うと、ニヤニヤと笑い出した。
「え……?」
「女の子なら、菜々子ちゃんみたいな女の子」
「え、ええっ!」
可愛いし、オシャマだけど素直だし、と八木橋は言った。ニヤニヤと笑う顔は鼻の下をデレデレと伸ばしてるようにも見えてムカついた。八木橋には甘い目線で纏わり付く菜々子ちゃん。私をオバサン呼ばわりし、八木橋が現れた途端にお姉さんと呼んだ菜々子ちゃん……いや、菜々子!
「か、可愛くなんかないわよっ、コロっと騙されて馬鹿じゃないのっ?」
「なんだ、ヒガミか?」
「ひがんでなんかないわよっ」
「へえ? ほお??」
「あんな生意気な子より可愛い子を産むんだからっ」
「可愛い子??」
「当たり前でしょっ、私が産むんだから! しおらしくて控えめな子!」
八木橋は、ふうっと息を吐いて、再び頭を掻いた。応戦してくると構えてた私は肩透かしを食らった。
「……産むんだな?、産むんだよな?」