雪の足跡《Berry's cafe版》
自分のベッドを見る。優しく抱いてくれた八木橋を思い出してしまった。八木橋の手、指、切なそうな表情。終えた後の布団からはみ出た足。
「……」
恥ずかしさで顔が熱くなる。それと同時に胸がいっぱいになった。あの時に八木橋は黙って私の前髪を梳いていた。
何かを言いかけるときストックを突く彼の仕草と重なる。本当は八木橋は何か言いたかったのかもしれないとふと思った。あの日も私を初めて抱いた夜も。
八木橋の携帯に電話をする。僅かワンコールで出て、焦った。
「つ、着いたから」
「ああ」
八木橋はひと呼吸置いた後、体、大丈夫か?、とぶっきらぼうに言う。
「うん……」
聞きたいことはいっぱいあるのに、本人を前にすると言葉に詰まる。
「病院、行くんだろ?」
「あ、うん」
卓上のカレンダーを見る。月初で仕事が忙しくなる前に、早退して行くしかない。
「明日か明後日かな」
「……明後日」
「うん」
「明後日なら休み取れるからさ」
「え?」
だから空気読めよ、と八木橋は怒る。