雪の足跡《Berry's cafe版》

 病院に着き、受付を済ませる。バインダーに挟まれた問診票を手渡されて待合室のソファに八木橋と腰掛けて記入をする。住所、氏名、生年月日、血液型、最終月経、周期、持病。恥ずかしいのか八木橋は壁を見ていた。書き終えて受付に渡すと紙コップを渡された。トイレに行き、用を済ませる。八木橋のところに戻り、再び隣に腰掛けた。

 辺りを見回す。平日の午後とあってか人は疎らだった。皆、揃えたようにジャンパースカートかチュニックを着てお腹を突き出している。一見普通の体型の私も本当に私もああなるのかと思いながら、まだ膨らんでない私は疎外感を覚えた。

 しばらくして名前を呼ばれる。八木橋は、俺も行くか?、と言ってくれたけど断った。問診票だけで戸惑ってるのに診察に付き添うなんて無理だと思ったから。ひとりで診察室に入る。


「おしっこの検査で妊娠反応はありました」


 そう告げられた後、医師から問診を受ける。最終月経はひと半月以上前だけれど、今回は排卵が遅れてたみたいです、と告げた。内診をするから台に上がるよう言われた。後ろに控えてた年配の看護師が私に指示をする。初めてでしょう?、大丈夫よ、こっちね、と優しく誘導してくれた。小さな個室みたいな空間に押し込まれる。脱いだ下着はこのカゴに、ティッシュやナプキンは必要なら使って、脱ぎ終えたらここに腰掛けて足をここに乗せてね、と細かく説明してくれた。


「力抜いてくださいねー」


 カーテン越しの医師の声と共に台が機械音を出して上がる。歯医者さんの診察台のように。私の緊張は最大になっていた。カーテンの向こうで動く人影、カチャカチャと鳴る器具の音。

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