雪の足跡《Berry's cafe版》

 触診を終えて、超音波の器具が入ると告げられる。


「左のモニター、映りますか?」
「……はい」


 壁に掛けられたA4位の小さな画面。扇状の形の中で砂嵐のように白黒の細い縞々がゆらゆらと揺れている。


「うーん、赤ちゃんがまだ見えませんね」
「え……?」


 中の器具がぐるぐる動かされる。


「あ?、これかな。見えますか、黒い点」
「はい」
「これかもしれませんねー」


 この小さい点が? 不思議に感じながら画面を見ていると、揺れていた縞々が時々止まる。直に器具は抜かれ、台は降ろされた。再び診察室に戻る。


「お母さんのおっしゃるように排卵日が遅れてたのかもしれませんね、最終月経から計算すると見えてもおかしくない時期ですので」
「お母さん?」


 年配の看護師が、あなたのことですよ、と笑う。


「お母さん……」


 医師は名刺大のモノクロ写真を一枚私に差し出した。さっきの黒い点が写っている。そして、また来週来てくださいと医師が言って診察は終わった。

 その写真を手に待合室に戻る。八木橋は私に気付くと立ち上がった。

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