雪の足跡《Berry's cafe版》

「母さんの好きなエビチリもコースに入ってるといいね」
「親をからかって」


 小型バスをチャーターして猪苗代まで皆で行ってもいいし、式場は二人で相談して好きなところにしなさいね、と母は言った。

 食事を済ませてお風呂に入る。好みは多少変わったようにも思うけど、日によってはミルク系の甘いものが食べたくなったりもした。下着につくおりものも増えた。体の変化を不思議に感じる。これからもっともっと変わっていく。


「コユキ。女の子ならそのまま“小雪”とか言いそう……」


 やっぱり八木橋もスキー馬鹿じゃん、と鼻で笑った。男の子なら颯とか隼人とか颯爽と滑っていくような名前を考えそうだと思った。ベッドに入っておやすみなさいのメールを打つとすぐに着信音が鳴った。ぶっきらぼうな割に八木橋はまめに返信をよこす。お腹に手を当てると暖かくなる。その重たさを感じながら眠りについた。

 朝、お腹に違和感を覚えて目が覚めた。これも妊娠初期独特なものかと流しながら起き上がる。


「……」


 下着に生暖かい妙な感触に胸騒ぎがした。液体が伝う感触……。


「え……??」

< 235 / 412 >

この作品をシェア

pagetop