雪の足跡《Berry's cafe版》
医師は超音波の器具をぐるぐると動かして何かを探しているようだった。
『綺麗に何も見当たりません』
『まさか、生理ですか??』
『妊娠反応はありましたので、正確には化学的流産ということになります』
どこを探しても点はなかった。あれから数日経っている、順調なら袋のようなものが見えてもいい筈だと医師は言った。
『受精卵の染色体異常によるものです。自ら気付いて流れてしまう、そう考えてください』
『流産……?』
流産といっても医学的には流産の部類には入らない、妊娠したことに気付かないで生理が遅れた位に考える場合の方が多いかもしれません、とサラサラと説明された。
『流産って、流産……、赤ちゃんは赤ちゃんは!』
私は無意識に立ち上がっていた。年配の看護師が慌てて私に駆け寄り肩を優しく叩く。宥められるように再び腰掛けた。医師は、特に処置は必要ありません、今までと同じ生活を続けて構いません、夫婦生活も特に制限しなくても大丈夫です、と説明をしていた。でもそんな機械的な言葉は頭に入らない。流産という言葉がリフレインする。