雪の足跡《Berry's cafe版》
お風呂上がり、部屋に入って八木橋にメールする。おやすみなさい、レセプト片付いたから今日で残業終わり、とたわいもない内容。勿論、八木橋から、体調は悪くないか、飯は食えてるか、と私を気遣う返信がすぐに来る。
翌日、仕事から帰宅すると母はダイニングで茶封筒を広げていたけど、私を見るなり慌ててそれを片付けた。
「早かったのね」
「うん」
見覚えのある茶封筒。あの父の知り合いが母に押し付けた見合い写真。母は、ご飯食べるでしょ?、とごまかすように封筒を棚に置いた。
「母さん?」
「今日、返しに行ったんだけど、会うだけでもって押し返されちゃってね」
気にしなくていいのよ、ほら、和彦ちゃんの妹がまだでしょ、紹介しようかと思ってね、とキッチンで夕飯の支度をしながら母が喋る。地元の地方公務員、知人からの紹介で身元ははっきりしてる、同居が嫌なら別に家を建てても構わない、式も花嫁さんの意向に合わせる、と条件が良いことを挙げた。
「ねえ、ユキはどうするの?」
「えっ、お見合い??」
馬鹿ね、お見合いじゃなくて八木橋さんとの結婚いつにするの?、と聞かれた。
「まだ決めてない」
そういえば八木橋は何も言ってこない。