雪の足跡《Berry's cafe版》
元カノにもマメにメールを送ってたんだろうか。こんなふうに不安にならないように、気遣って。
「ユキ、6月に結婚したいなら今年しちゃえば?」
「え??」
「再来月を逃したら、次の6月はまた来年にならないと来ないわよ」
母は笑う。そんな早くに嫁がせたいだなんて、寂しいと感じないんだろうか。八木橋と式の話をしてる時に寂しそうに見えたのは私の思い込みだったかなと感じた。
「宙ぶらりんより早く嫁いでくれた方が母さんも気が楽だわ。八木橋さんに呆れられる前にね」
あんな素敵な人、ユキには勿体ないわね、と再び母は笑う。でもそれはあの見合い写真の男性のことを言ってる気もした。母はもしかしたら、私にはあの男性と結婚して欲しいと思っているのかもしれない。
私の推測は合ってるかもしれない。寂しそうにする癖に結婚を急かすのは、見合い話に諦めがつくから。母だって、私が八木橋と知り合う前は婿をもらって同居するものだと思ってたと思う。私だってそのつもりでいた。友人にだって、“理想の恋人はお婿さんに来てくれる人”って公言してた。
大体、私が八木橋と結婚の話をしてるのに、会うだけでもって押し返された見合い写真を断れずにまた持ち帰るなんて、母はまだ諦めてないのかも、って。慌てて片付ける辺りも怪しい。