雪の足跡《Berry's cafe版》
朝のメール、夜のメール、週末は電話。八木橋はどれも欠かさなかった。
『明日夕方、迎えに行く。外で飯食うか?』
八木橋からのメール。自宅で夕飯だと母に気を遣わせる、だから外で済ませようと考えてるんだと思った。
『ヤギは何が食べたい? 和食、洋食、居酒屋系?』
甘いもん食いたい、と返事が来る。何でもいい、って言わないのも八木橋なりの気遣い方だと思う。任せるとか何処でもって相手任せにしない。
予告通り、仕事から帰宅した後に八木橋は自宅に迎えに来た。玄関に横付けされた車の助手席に乗ると、八木橋は助手席のシートに片手を掛け、身を乗り出してきた。優しいキスをする。
「……」
恥ずかしくて、俯く。何照れてんだよアホ、と八木橋は私の額を小突く。
「か、母さんに見つかったらどうするのよ?」
「ちゃんと確認したし」
八木橋はエンジンを掛けて車を発進させた。私はナビ代わりに右左と誘導する。有名なケーキ屋さんが始めたオーダーバイキングのレストランを選んだ。
八木橋はスピーカーから流れる音楽に合わせて鼻唄混じりにハンドルを切る。いつの間に辺りを見回してたんだろう。ちゃんと確認して、スムーズに手を回して唇を重ねて。キスをした後は優しく笑って私を見て。