雪の足跡《Berry's cafe版》
「じゃあ、その度に会ってたの?」
「ああ。それより爪、辞めたのか?」
「ううん。薬局がそういうのあまりいい顔しないから平日はしてない」
八木橋はケーキを平らげてサラダに手を伸ばす。
毎回こうして食事をして毎回彼女を送り迎えして、毎日メールもして週末には電話もして、八木橋は遠距離恋愛には慣れてるんだと思った。彼女のネイルにも気付いて何か感想も言ってたと思う。
「好きだった?」
「爪か??」
「違うわよ、元カノ」
嫌いで付き合うかよアホ、と笑う。きっと助手席に彼女を乗せる度に身を乗り出してキスもしてたんだろう、頬ではなく唇に。菜々子みたいに幼稚園児でもあるまいし。
八木橋は再び席を立ち、サラダのお代わりを取りに行った。後ろ姿を眺める。幅のある肩、筋肉質の腕。きっとその体で元カノを抱いた……。
「……」
考えたって仕方がない。終わったことだし、とは思う。でも考えてしまう。だって昨シーズンに知り合って付き合って、去年の今頃はまだ彼女と過ごしてた。
「こっちは桜は終わったんだな」
「うん。それでも今年は遅い方だった」
「なあ……。ゴールデンウイーク、猪苗代に来るか?」
「え? ヤギは忙しいでしょ?」