雪の足跡《Berry's cafe版》
「花見したいだろ?」
そういえば妊娠騒ぎで花見なんてしてなかった。
「あ、うん」
「あっちはこれからが見頃だからさ」
ホテルから歩いて行けるところにある桜並木がすげえ綺麗だし、そうだ携帯で撮った画像がある、と八木橋はシャツやジーンズのポケットをまさぐり始めた。でも携帯は車の中に置いてきたらしく、後で見せると言うと突然クスクス笑い出した。
「な、何よ?」
「安心しろよ」
元カノのことを考えてるのがバレたかと思った。元カノとも桜を眺めたのか、って。
「ちゃんと模擬店出るし」
「へ??」
「団子も食えるから安心しろよ」
「だ、団子を食べたいのはヤギの方でしょっ!」
俺はケーキ専門だしユキみたいに雑食じゃねえし、と八木橋は笑う。
直に前菜や料理も届いて二人で食事をする。八木橋は美味しそうに平らげてコーヒーを啜る。食事を終えて車に戻ると八木橋は携帯を取り出した。
薄暗い車内、画面からの青白い光が八木橋の顔を照らす。カチカチと操作する音に合わせて若干その色合いが変わる。一瞬、その八木橋の表情が固まったのが見えて私は携帯を覗き込んだ。