雪の足跡《Berry's cafe版》
「……」
あの画像。リフトに乗って元カノと一緒に写ってる写真。私は気まずくて覗き込んでないフリで運転席と助手席の間に置いてあるティッシュを引き出した。
「あ、これこれ」
八木橋は何事も無かったように携帯を差し出した。小さな川の岸に並ぶ桜の画像。堰から流れる水に花びらが散り落ちる。
「綺麗だね」
「ユキは花より食いもんだろ?」
「ヒド……」
突然視界が暗くなる。八木橋は酷いと言い掛けた私の唇を唇で塞いだ。出掛けにされた優しいキスとは違う。息も出来ないくらいに八木橋は私の口内を貪る。私は苦しくてヤギの胸を押し返した。
「ヤ、ヤギ……?」
悪い、と言いながら私から離れて髪を掻き上げる。何か言いたげに頭を掻く。
「ユキ……」
「何?」
「早く猪苗代に来ないか?」
「早く行ったって桜は咲いてないでしょ??」
アホ、と八木橋は言ってハンドルに手を掛けてもたれた。