雪の足跡《Berry's cafe版》
その休日出勤から帰宅して母に報告する。
「柏田さん、来た」
「え?」
母は驚いた。電話が来て、ユキさんに一度でいいから会いたい、本人に直接断られたなら納得します、と言ってきたらしい。母は勿論断った、今日は休日出勤で留守ですし、と。逆に仇になったわね、と母は笑った。
「まさかちゃんと断ったんでしょうね?」
「ファミレスで食事した。真面目そうだし優しいし、いい人だった」
早く八木橋さんと仲直りしなさいね、と母はキッチンに立つ。
「母さん。私、柏田さんと面識ある?」
母に柏田さんが何故私のことを知ってるのか尋ねた。
「無いわよ」
「じゃあ何故」
「父さんの知人がユキの写真を持っててね」
父の会社で行われた家族レクリエーションで撮った写真。知人と私たち家族が映ってたその写真を見たらしい、と母は言った。趣味がスキーであることも私を気に入る一因だった。
「気を持たせるようなことしちゃ駄目よ、ユキ」
気を持たせるも何も私は柏田さんとのことを真剣に考えている。大体、今日のことだって柏田さんが勝手に押しかけたことになってるけど、本当のところは母が仕組んだと私は読んでいた。母から柏田さんに連絡したんじゃないか、って。娘は恋人と別れました、今がチャンスですよ、みたいな。