雪の足跡《Berry's cafe版》
仕方なく治りが遅くなると言われた解熱剤を使う。一時的に落ち着いた私はストンと落ちるように眠りに着いた。ずっと抱っこしていた娘を布団に下ろし、汚したパジャマを洗濯する。お粥の用意をする。近くの妹に林檎ジュースや消化の良い赤ちゃん用の煎餅などの買い物を頼む。一通り準備を終えたところで自分も畳にへたり込んだ。体のあちこちが痛い。標準より小さかったけど15キロの体を支えるのに腕や腰、背中を使ったんだろうと解釈してそのまま添い寝をするように横になって休んだ。
しばらくして私の泣き声で目が覚める。起き上がろうにも体は痛い。悪寒、震え。そこで気付いた、自分もインフルエンザを発症してると。
『お母さん、暑い』
体に鞭を打ち、氷枕や濡れタオルを用意する。汗をかいた私の体を拭く。それでもホッとしていた。暑い、と言うのは熱が上がりきった証拠だから。吸い飲みにジュースを入れて一口ずつ飲ませる。痛い背中を曲げながら、私の口に吸い飲みを当てる。もっともっと、とせがむ私を宥めた。本当は沢山飲ませてあげたい。でも一気に飲ませるとまた吐くと思った。
落ち着いたのも束の間、夜中に私は熱を上げた。気分が悪くて抱っこをせがむ私を壁にもたれながら抱き抱える。自分も頭がクラクラする、横になりたい、でも滅多に泣かない娘が涙を浮かべてるのを見て必死だった。
『大丈夫。お母さんがいるから』
『うん』
その頃夜中まで残業続きだった父はその日も夜中に帰宅した。心配を掛けたくなかった母は私がインフルエンザになったとだけ告げた。