雪の足跡《Berry's cafe版》

 幸い予防接種を受けていた私と母は翌々日に熱も下がり、大事には至らなかった。父も休んだのは一日だけで後は仕事に出た。

 私はそのキャラアイスの蓋を洗い、しばらくの間眺めては宝箱に仕舞い、出しては眺めていたらしい。母もそれを見て手作りおやつが嫌だった訳じゃないと知り、早合点した自分を反省した。


『もしあの時父さんがアイスを買って来なかったら、休みを取っていなかったら、と思うとね』


 インフルエンザで二人ともこの世にいなかったかもしれない、というのは大袈裟だけど、夫婦の間に溝は出来ていたかもね、と母は笑った。胃の痛みに現実に戻る。


「い、痛……食べなきゃ良かった……」


 もし今の私に子供がいて同じく胃腸炎を患っていたら看病もしなくちゃいけない。母強し、と言うけど私もそうなれるのか不安になった。





< 300 / 412 >

この作品をシェア

pagetop