雪の足跡《Berry's cafe版》
八木橋ならきっと一緒に焼いて一緒に食べた。勝手にジャンジャン焼いて片っ端から食べる八木橋に、ずるい!、と私がいちゃもんを付けて。アホ!、と笑ってでもそのくせちゃんと追加注文もして私の分も確保してくれる。きっと八木橋となら何でもムカついて何でも楽しくて何でも安心出来ると思った。
午後、キャンドル専門店に移動した。キャンドルの手作り体験をする。小振りな硝子の入れ物に飾りの硝子細工や貝殻を飾り、そこにジェル状のロウを流し込むというもの。柏田さんはグリーンの海藻や熱帯魚のモチーフを選び、水族館のようにするみたいだった。私はバケツを被った雪だるまとスキーを履いた男の子にした。
「青山さんは雪山ですね」
二人で席に着き、店員の施しを受ける。硝子細工をグラスに置き、まずは無色透明のジェルが注がれる。赤いマフラーをしたスキー少年はガラス越しに私を見つめる。赤いマフラーにスクールインストラクター用のウェアを思い出した。
エッセンシャルオイルも入れられるというので小瓶を手にする。ラベンダー、レモン、ミント、ローズマリー、イランイラン。人気のある主要な香りはあった。でも私の好きなスイートオレンジが無い。
「どうしましたか?」
「私の好きなオレンジの香りが無くて」
「レモンはどうですか?」
『オレンジじゃなきゃイヤ!』
大人気ないとは思う。でもレモンじゃ妥協出来なくて入れるのを辞めた。