雪の足跡《Berry's cafe版》
徐々に柏田さんの顔が近付く。何をされるかは分かってる。八木橋もそうやってキスした。あの技術選全国大会決勝日、私にプロポーズをした後に。僅かな時間に八木橋の台詞が頭を過ぎる。
『俺はユキを支える。ユキもユキの母さんも。母親に何かあればいつでも里帰りすればいい。それでも駄目ならその時は俺も山を下りる』
支える、私も母も支える……。元カノの身代わりで私を必要としてたらそんな台詞は言わないんじゃないか、山を降りるなんて言わないんじゃないか……。
「やっ……」
私は咄嗟に俯いた。肩に掛けられた柏田さんの手が離れた。
「僕、焦りすぎましたか?」
「……いいえ」