雪の足跡《Berry's cafe版》

 電話口の向こうで大人の声がする。菜々子また勝手に電話して駄目じゃない、八木橋さん?、幼稚園のお友達??、と菜々子に聞いている。多分母親。


「もしもし、ごめんなさいね。どちらさま?」
「あ……ご無沙汰してます。青山ユキです。あの、八木橋の……」


 そこまで言うと理解したのか母親もご無沙汰してます、その節は娘が失礼なことを、と挨拶を始めた。


「今日も菜々子が何かしでかしたみたいで申し訳ありません」


 菜々子は悪くない、オバサンが悪いの!、と母親に抗議してるのが聞こえた。ケンカしたら仲直りするんでしょ、ママもパパと仲直りのチューするでしょ、小学校の先生だって仲直りの握手しなさいって言うもん、というようなことを泣きながら説明していた。


「すみません、菜々子、八木橋さんと青山さんのことを心配していて……」
「え??」
「多分、菜々子は青山さんをお姉さんだと思っていて」


 気分を害されたらすみません、一目置いてるというか、慕っているというか、と母親は言った。


「でなければ勝手に電話したりこうして泣いたりもしませんので」
「はい……」


 姉妹。私にはいないから分からない。でも憎まれ口叩いて叩かれてそれでも尚、気になってしまう菜々子。姉妹ってそんなものだろうか。


「すみません、お気に障りましたか?」
「いえ。私は一人っ子で分からなくて。でも嬉しいです」

< 321 / 412 >

この作品をシェア

pagetop