雪の足跡《Berry's cafe版》

「“恋雪”じゃなきゃ駄目だから」


 雪に恋するで“恋雪”。もしかして恋雪の雪は私のユキ……? 八木橋を見るけど奴はお構いなしに私のケーキを口に運ぶ。少し頬の赤い八木橋。きっと八木橋は私じゃなくちゃ駄目だって言いたいんだと思った。


「ヤギ……ねえ、それって」
「それだけで分かれよ。ったく、ダ埼玉人は」
「ダサ……、か、柏だって大して変わんないわよ!」


 海無し県の分際でうるせえよ、と言ってガツガツとケーキを平らげる。


「本当に……本当に私でいいの?」
「当たり前だろ」
「だって」
「ユキの説明に“分かった”とは言ったけどよ」


 八木橋は恥ずかしいのか頬を赤くしたまま目を逸らしてコーヒーを啜る。こんな風に照れる八木橋を見るのは初めてかもしれない。そう思って眺めてると突然、八木橋は下から見上げるようにしてニヤリと笑った。


「あれであの時引き止めたらお前俺のこと川に突き飛ばしただろ??」
「そ、そこまでしないわよ」
「はあ?、そうか??」

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