雪の足跡《Berry's cafe版》

「卑怯だし」
「卑怯? 何が」
「決まってるでしょ、携帯番号」
「携帯番号? 何のコトだよ」
「菜々子に私の番号教えたの、ヤギでしょ。コドモをダシにして」


 何だ、そっちかよ、と八木橋はホッとしたように息を吐いた。


「何だとは何よ」
「何だとは何よって、何だよ」
「何だとは何よって何だよって何よ!」
「何だとは何よって何だよって何よって何だよ」
「何だとは何よって何だよって何よって何だよって何よ!」
「何……」


 八木橋がそう言いかけて、二人で顔を見合わせる。そんなメールをやり取りしたのを思い出した。


「成長してないね、私たち」
「そだな」


 二人で笑う。今は安心感がある。前みたいに恐る恐る元カノのことを聞いたりするんじゃなくて、何でも話せるって感じた。


「ねえ、そっちかよって……?」


 ああ、墓穴掘っちまったな、と八木橋は言った。


「携帯。俺の」

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