雪の足跡《Berry's cafe版》

「澪とお揃いだったろ」


 確かに八木橋には似合わない色。どちらかと言えばモノトーンの配色でも白よりは黒のイメージ。きっと彼女に合わせたんだろう。


「あ、うん……」


 八木橋と初めて結ばれた夜の翌日、私は遊ばれたと勘違いして八木橋の携帯を雪の中に放り投げた。レッスンのあった八木橋はすぐに拾いに行くことも出来ずにスクール小屋に向かった。雪の降っていたあの日、レッスン終了後に探すのは大変だったと思う。


「だからあの時拾いに行ったんだなって。ちょっと妬けた」


 日付が変わる頃まで私を抱いて、そのあとに合コンに参加して、地元のコを送って、翌朝早くから仕事してレッスンして。相当疲れてた筈なのに雪の中を探したんだ、って。それ程までに八木橋にとって大切な携帯なんだと思った。その点でも妬けた。


「いや。あれはロッジのスタッフが見るに見兼ねて拾ってくれた」
「へ??」


 八木橋は、ほら、通行止めとか業務連絡がメールで来るだろ?、と説明した。


「自分で拾いにいったんじゃないの??」
「神の思し召しっつうかさ、あのまま買い替えるつもりだった」


 八木橋は自分の携帯をポケットから取り出した。元カノとお揃い。私が水を掛けた携帯。

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