雪の足跡《Berry's cafe版》
コーヒーでも飲もうかと給湯室のある廊下に出ようと立ち上がる。
「ん?」
目に留まったのはごみ箱。A4くらいの大きな封筒が開けられることもなくそのまま放り込まれていた。ダイレクトメールだろうと手を伸ばした。
「駄目じゃない、ちゃんと宛名くらい消して捨てなきゃ……やっ!」
封筒を持ち上げると、下から封を切ったのか中からバラバラと書類が落ちてきた。
「もう、なんで下から切るのよっ。ん……?」
出てきたのは、研修会のご案内、というタイトルの文書だった。仕事の書類かと思って何気なく目を通した。
「これって、技術選の?」
発信元はスキー制作会社、八木橋と私がお揃いで持っている板の会社名だった。つまりは、八木橋が板制作に携わった会社。次季に向けての筋力トレーニングとかイメージトレーニングとか予想される審査ポイントとか研修内容と実施日が書かれていた。八木橋が書類をごみ箱に入れた理由はすぐに分かった。研修日時は週末の2泊3日、サービス業に従事している八木橋が行ける筈もなかった。それか技術選に興味がないのかもしれない。