雪の足跡《Berry's cafe版》

「澪さん、元気かな」
「さあな」
「この携帯見たら何て言うだろう……」


 ふと思い出した八木橋の元カノ。まだ大切に持ってるだろうか、お揃いの携帯。正直私はホッとした。だって別れたとは言え、他の子とお揃いだったから。


「犬好きだったし澪ならきっと笑うだろ、『食べられちゃう運命だったのかな』とか言ってさ」
「なら、いいけど……」


 澪さんの真似をして喋る八木橋に妬いて、壁のポスターを見る。


「ユキなら……」
「何」
「泣きそうだな」


 図星だと思った。お揃いにして浮かれた自分が急転直下したのを想像した。だから尚のこと八木橋の言う対照的な澪さんの反応におどおどした。


「そんなことないわよ」
「そうか? それか怒って俺にまくし立てるか」
「それじゃ菜々子みたいじゃない」
「いや菜々子ちゃんなら、先生が無事ならいいのっ、って言いそうだな」
「ええっ!」


 八木橋は、菜々子ちゃんは可愛いな、とニタニタ笑う。二人で並んでカウンターに座っていたけど、ムカついて席を立ちそうになる。


「アホ」


 八木橋に手首を捕まれて腰を下ろした。


「ユキに水を掛けられたときに壊れてた筈だったし」
< 360 / 412 >

この作品をシェア

pagetop