雪の足跡《Berry's cafe版》
「こうしてユキといられるんだからこいつの役目も終えたんじゃないのか?」
「うん……」
「携帯にこだわることより、ユキがちゃんと幸せになることが澪のためにもなるだろ?」
「そだね」
壊れた携帯も念のため穴を開けて処分されていく。私の携帯もデータを移し替えてショップを出る頃には日もとっくに暮れていた。助手席で新しい携帯を眺める。
「ヤギ、なんか雄弁になった」
「まあな」
「言いくるまれてあげる」
「うるせえよ。人をペテン師みたいに言うな」
赤信号で停車すると、八木橋は髪を掻き上げた。
「……ちゃんと言わないとユキは何処かに行っちまいそうでさ」
「野良猫みたいに言わないでよ」
ペテン師と野良猫か、意外と相性がいい組み合わせかもな、と八木橋は運転席で笑う。
「子供がいた方が俺が幸せだとか、もう勝手に決めんなよ」
「うん……」
「畳と女房は新しい方がいいとか」
「うん……」
「俺がロリコンで処女がいいって考えてるとか」
「へ??」
信号は青に変わり、八木橋は肩を震わせながら車を発進させた。