雪の足跡《Berry's cafe版》
「大丈夫だ。恋雪はきっと戻って来てくれる」
「そだね」
「信じて待ってやらないと恋雪が可哀相だろ」
「うん……」
八木橋の言う通りだと思った。冷たい風が吹いて二人で震える。そして同時にくしゃみが出た。二人で顔を見合わせて笑う。冬もそこまで来ている。
「恋雪に噂されたかな」
「ああ。そだな」
八木橋は、寒いから部屋に戻るぞ、と顎をしゃくる。
八木橋は自動ドアを開けてロビーに入り、スタスタとコンビニ脇の鉄扉に向かう。足早に歩く八木橋の後ろを私は必死に着いていく。部屋に着き、中に入るとドアを閉め、八木橋は写真立ての入った紙袋を置いた。
「ユキ、続き」
「つ、続き……」
私をドアに押し付けるように私の両肩を押さえ、すぐに唇を重ねた。さっきより熱いキス、押さえ付けられた私は受け入れるしかなくて。
しばらくして八木橋が唇を浮かせた。
「ヤ……」
「ヤギじゃないだろ。早く言えよ」
「た……。ん?」
八木橋のポケットからまた着信音が聞こえた。八木橋は私から離れると、いらついた様子で頭をボリボリと掻きながら携帯を取り出し画面を見た。そして掻いていたパタリと手を止めた。その様子が気になり、私も画面を覗き込む。
「あ……」
表示されていたのは“澪”という名前。私は画面から八木橋の顔へと視線を移した。八木橋は私を見ていた。まるで電話に出てもいいかと私に尋ねるように目を合わせている。