雪の足跡《Berry's cafe版》
私が頷くと八木橋はボタンを押して通話を始めた。おう、久しぶり、と懐こく話す様子に少し妬けた。それが分かったのか、八木橋は空いてる手の人差し指で私の額を突く。
「どした?」
額の人差し指が徐々に下りて私の唇をなぞる。八木橋は澪さんの話に相槌を打つ。私にする相槌の打ち方より優しいのも妬ける。
「え?……。良かったな、おめでとう」
おめでとう……?、何の話かさっぱり分からない。八木橋は人差し指で私の唇を悪戯し続ける。上唇をなぞり、下唇をなぞり、それを繰り返す。優しく微笑みながら、優しくなぞる。
「いや、礼なんて。ああ、伝えとく。澪は相変わらずだな。ちゃんと幸せにしてもらえよ」
幸せに?、澪さんも結婚するんだろうか。
「ははは。澪の方がしっかりしちまったな。ああ、元気でな。じゃあ」
ようやく通話を終えた八木橋は携帯を閉じ、ポケットにしまうと私を見つめた。
「澪、結婚するって」
「え?」
「結婚して海外に行くって」
「ええっ!?」
私は訳が分からなかった。東京から猪苗代に来るのだって躊躇してた八木橋の元カノが何故、海外に……。
「あのあと付き合い始めた会社の先輩が急に海外勤務が決まって着いてくって」
「でも何故」
「悩んだらしい。でも悩んで機会を逃したら最後だって、俺とのことで分かったからだってさ」
「そう……」
澪さんもきっと辛かったんだと想像した。猪苗代に来るか来まいか、親や仕事に挟まれて東京を飛び出す勇気が無かったんだって。その気持ちは痛いほど分かる。
「乗り越えたなら、良かった」
「ああ」
「でも、海外とは思い切ったね」
「そだな……。で、ユキに礼を言ってくれって」
「礼?」
「ああ。あのとき、ほらユキが澪の嘘に合わせたとき、キッパリと言っただろ?」
「どした?」
額の人差し指が徐々に下りて私の唇をなぞる。八木橋は澪さんの話に相槌を打つ。私にする相槌の打ち方より優しいのも妬ける。
「え?……。良かったな、おめでとう」
おめでとう……?、何の話かさっぱり分からない。八木橋は人差し指で私の唇を悪戯し続ける。上唇をなぞり、下唇をなぞり、それを繰り返す。優しく微笑みながら、優しくなぞる。
「いや、礼なんて。ああ、伝えとく。澪は相変わらずだな。ちゃんと幸せにしてもらえよ」
幸せに?、澪さんも結婚するんだろうか。
「ははは。澪の方がしっかりしちまったな。ああ、元気でな。じゃあ」
ようやく通話を終えた八木橋は携帯を閉じ、ポケットにしまうと私を見つめた。
「澪、結婚するって」
「え?」
「結婚して海外に行くって」
「ええっ!?」
私は訳が分からなかった。東京から猪苗代に来るのだって躊躇してた八木橋の元カノが何故、海外に……。
「あのあと付き合い始めた会社の先輩が急に海外勤務が決まって着いてくって」
「でも何故」
「悩んだらしい。でも悩んで機会を逃したら最後だって、俺とのことで分かったからだってさ」
「そう……」
澪さんもきっと辛かったんだと想像した。猪苗代に来るか来まいか、親や仕事に挟まれて東京を飛び出す勇気が無かったんだって。その気持ちは痛いほど分かる。
「乗り越えたなら、良かった」
「ああ」
「でも、海外とは思い切ったね」
「そだな……。で、ユキに礼を言ってくれって」
「礼?」
「ああ。あのとき、ほらユキが澪の嘘に合わせたとき、キッパリと言っただろ?」