雪の足跡《Berry's cafe版》

 八木橋はニヤニヤと笑い出した。


「……なんだ、照れてるのか?」


 ユキって意外とウブなんだ?、と私をからかい始めた。一瞬にして昨夜のことが頭を駆け巡る。八木橋の唇、指、手のひら……。昨夜のキスを愛撫を思い出してしまう。


「ユキ、顔が赤いぞ? 思い出してんのか??」


 でもその唇も指も手のひらも、他の子を愛撫する。今夜にでも、もしかしたら昨夜の合コンの女の子にも既に触れたかもしれない。


「……合コンに出たって本当?」
「ああ、あれ」
「女の子送って行ったって本当?」
「ああ。だってしょうがねえだろ。あれは……」
「い、言い訳するの?」


 八木橋は、ヤキモチかあ?、と私を更におちょくる。


「ムカつく! あんたみたいなチャラ男に妬いたりしないわよっ」
「なんだよ、人を遊び人みたいに」
「今日だってご指名入ってんでしょ? どうやって連れ込むか考えながら教える訳??」
「アホ」
「ア……」
「今日の子は去年教えた子が直々に俺を指名してきてさ」
「なあんだ、去年のうちに唾付けてたんだ?」
「当たり前だろ。お前なんかより若くて素直で可愛い子だし」
「なっ……!」
「ちゃんと可愛くおねだりもするぞ、キスして、って」
「……」


 呆れて返答も出来ずにいると八木橋の携帯が鳴った。内ポケットから取り出し、通話を始める。ああ、もうこんな時間か、と話しながら壁の時計を見る。13時20分。間もなく午後のレッスン開始時間になる。八木橋は、すぐ戻る、と返答して通話を切った。

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