雪の足跡《Berry's cafe版》
旅行当日。叔父の息子、つまりは従兄弟のワンボックスカーを借りて旅行に出た。叔父夫婦、父方の叔母、母方の叔母、母の5人を乗せて私が運転する。助手席には乗り物酔いする叔母が乗り、残りの4人は高速に乗るとすぐに酒を飲み始めた。助手席の叔母は酔い止めが効いて爆睡、後ろの4人は子供が小さかった頃の話をしていた。当然私のこともつまみにされた。ユキちゃんはお父さんのお嫁さんになるって言ってきかなかったよねえ、で、うちの和彦が親とはケッコンできないってホーリツで決まってんだ、とか言って泣かせて、和彦はユキちゃんのこと好きだったのよ、とからかわれた。
「ユキはからかわれやすいのよ」
「和彦はいつもユキちゃんにいたずらしたり意地悪言ったり。本当にごめんなさいねえ。でも後にも先にもユキちゃんが泣いたのはあの時だけだった」
「流石にあの時は和彦ちゃんも慌ててたわね」
「なんとかユキちゃんを笑わせようと百面相したら余計に怒らせちゃって、ユキちゃん地面の砂つかんで和彦に投げて今度は和彦が大泣き」
そうだったわね、と後部座席で叔母と母が話している。その和彦も数年前に結婚し、気の強い嫁の尻に敷かれてるらしい。
「ユキはどんな人と結婚するのかしらね」
「プレッシャー掛けないでよ、母さん」
「よく父親に似た人を選ぶって言うけど、ユキちゃんいい人いないの?」
父方の叔父が、披露宴で祝い酒歌ってやるぞ?、と言い、叔母がブーケは私に造らせてね、と言い、私をからかう。
「ユキちゃんの花嫁姿、義兄さんにも見せてあげたかったわね」
車内がシンとする。母が、きっと空から見てるわよ、号泣して当日は雨になるわね、と冗談を言って和ませた。