雪の足跡《Berry's cafe版》

 東北道のジャンクションから磐越道に入ると雪景色になる。直に降りるインターチェンジになり一般道に出る。チェーンを履き、ホテルまで一気に登ると先にはリフトが動いてるのが見えた。リフトに乗っている人に目を凝らす。ロビー前に車を止めて人と荷物を降ろす。車を駐車場に止める。雪掻きをしてたスタッフを目で追う。無意識に自分がしている行為に気が付いてハッとした。

 ホテルのロビーに入ると叔母達は荷物をクロークに預けていた。早めの昼食をホテル内にあるレストランで取る。私はスクールの手続きをするからと言って食後の飲み物を待たずに席を立った。ホテルを出てゲレンデ前のレストハウスにあるスクール受付に行く。既に打ち出されていた申込書内容にサインをしてリフト券とレンタル申込書、ゼッケンを受け取る。説明を受けながら書類を見ると、担当インストラクター名の欄には酒井と掛かれていた。


「酒井さんか……」


 受付の女性に、酒井では何か、と尋ねられて、いえ何でもないです、と慌てて答えた。ガラス越しにゲレンデを見る。赤いウェアのインストラクターは数人いたけど八木橋ではなかった。

 一度レストランに戻り5人を連れてレンタルコーナーに行く。ウェアや板などを借りる。更衣室に行き着替えさせる。叔父と母は経験者だから放っておけるけど、残りの3人の叔母達は私が着替えさせてブーツも履かせた。母にも手伝ってもらい、板をゲレンデまで運ぶ。初心者の3人はブーツの硬い感触に床を歩くだけで苦戦している。人当たりのソフトな酒井さんならきっと上手に教えてくれる、年下キャラの酒井さんならオバサマ受けする、酒井さんで良かったんだと自分に言い聞かせた。言い聞かせてる自分に、虚しくもなった。

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