雪の足跡《Berry's cafe版》

 リフトから初心者コースを眺める。インストラクターの赤いウェアがあちこちに見えるけど、八木橋らしきインストラクターはいなかった。顔を合わせたところで何を話していいか分からないし、用事なんてない。頭の中では会う理由なんて無いって言い聞かせてるのに、どうしたって目が探してしまう。ただ、一目、姿を見たい……。

 全リフトを一通り乗って滑ってみたけど八木橋には会えなかった。運がないのだと思う、縁がないのだと思う、もう諦めてしまえと言われてる気もしてきた。会いたいなら電話すればいい、メールを送ればいい。番号だってアドレスだって知ってる。和彦に砂を掛けた私は何処に行ったのだろう。

 叔母達の様子が気になり再び麓の初心者コースに戻る。コース脇の緩やかな斜面で体を横向きにして小さなコドモが階段を一段ずつ上るみたいにちょこちょこ足を動かしていた。3人。


「あ、れ……?」


 近寄った私に気付いた酒井さんは私に話し掛けてきた。


「お母さんと叔父さん、別のグループに編入してもらったんだ」


 板も履けてちゃんと滑れるしリフトも行けそうだから中級グループを勧めた、と説明し、辺りを見渡した。


「さっきまでこのコースにいたけど、移動したかな。多分、ロマンスリフトの迂回コースだと思うよ」


 私はその迂回コースに向かった。

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