雪の足跡《Berry's cafe版》
「ア、アホって何よ」
「決まってるだろ、アホだからだ」
「はあ??」
「着いたんなら、ちゃんと返信よこせよ」
八木橋から来た、あのメール。心配して電話くれた?
「……ごめんなさい」
何故。何故、心配するの?
「無事ついたんなら、いい……」
沈黙する。でも八木橋も通話を切る気配はない。何か言いたいことでもあるんだろうか。私だって話すことなんてない。でも無言の通話でも自分から切りたくはなくて、玄関に置いた荷物の前で立ち尽くす。壁には板、ストック。八木橋とお揃いの。
何か話そうとさっきの母の話を思い出した。
「か……」
「ぎ……」
八木橋の声と重なって言葉を止めた。八木橋も何か言いかけて辞めた。
「な、何だよ」
「そっちこそ」
「ユキから言えよ」
「ヤギから言ってよ」
「こういう時はレディファーストだろ」
「そんな紳士でもない癖に」
「うるせえよ……」
再び沈黙する。
「ぎ、技術選に出るんだって?」
「……ああ」