雪の足跡《Berry's cafe版》
酒井さんもズルズルとラーメンを啜りはじめた。八木橋はいい人なんだと思う。面倒見がいいんだと思う。叔父や母にも学生にも当たりが良くて、ミサキちゃんとか菜々子ちゃんとか小さい子を上手に教えて。泣いてる娘さん預かって。娘さん……?
「む、娘さんって、まさか」
まさか、元カノ? 若そうに見えたけど未成年とか?
「そう、そのまさか」
「元カノですか?」
酒井さんは突然、ラーメンを吹き出してゲラゲラ笑い出した。
「さ、酒井さん……?」
「ヤギがさ、青山さんにちょっかい出すの分かるなあ」
酒井さんは卓上の紙ナプキンを2、3枚取って口元を拭いた。
「菜々子ちゃんだよ、ほらメルマガの」
「え、や……」
墓穴を掘ってしまった。顔が一気に熱くなる。
「菜々子ちゃんのご両親は事故のトラウマからしばらくここには来れなかったけど、ヤギに会いたいと菜々子ちゃんに泣き付かれてお正月にやって来たんだよ。ヤギって小さい子にもモテるんだよなあ」
「ヤギ、いつも女の子ばかり教えてる感じですけど」