理系彼女と文系彼氏(旧)
ありがとー、と間の抜けた声で言うと月見里君はすぐに寝てしまった。

確か、ここら辺に毛布が。

あった。

毛布を掛けてあげる。

七月とはいえ美術準備室はひんやりしている。

風邪でも引かれたら寝覚めが悪い。

「ふう………………」

月見里君の寝顔を見ているとついため息が出た。

やっぱり凄く美形。

目を閉じたから一層目立つ長い睫毛。

すっと通った鼻筋。

薄紅色の薄い唇。

ああ、描きたい。

球技大会の練習が始まってからはほとんど部活がなかった。

休み時間はもちろん練習。

放課後だってずっと練習だから。

最初は嫌々描いていた絵だけれど案外性に合っていたらしく最近は楽しくなってきていた。

抽象画の良さは全然わからないけど、精密画の緻密な美しさには純粋に感動した。

月見里君の美しさを写しとりたくなった。

準備室に散らかっているスケッチブックから白紙のものを探し出す。

30分もあればデッサンくらいなら出来るはず。

私は急いで紙に鉛筆を走らせた。
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