理系彼女と文系彼氏(旧)
「理恵ちゃん?」

かりかりとスケッチブックに月見里君の姿を写していると寝ていた彼の目がぱちっと開いた。

私はスケッチブックを閉じて答える。

「おはようございます。少しは疲れ、取れました?」

んー、と伸びをする月見里君。

「微妙。何、描いたのー?」

とろん、とした瞳。

眠そう。

「月見里君の寝顔です。眠いならオレンジジュースを飲みますか?」

だいぶぬるくなっていたオレンジジュースの缶を差し出す。

「ありがと。………ぬるいね」

ごく、と飲み舌を出して笑う月見里君。

「まあ、30分ずっと放置してましたし。練習、戻りましょうか」

「ん。……ん?僕の寝顔を描いたの?てか、間接キスっ!」

何を今さら。

「はい、描いてました。綺麗だったので。無理矢理キスしたあなたが何を言いますか」

私の言葉に軽く頬を掻く月見里君。

「き、綺麗って。僕の顔の事?」

「ええ、正確には寝顔がですね。見ます?下書きですけど」

こくこくと異常な勢いで頷く彼に私はスケッチブックを開いて見せる。

「えへへー、理恵ちゃんが僕のこと描いてくれた。嬉しいな」

整った顔がでれでれに崩れている。

「何にやけてるんですか。練習に戻りますよ?」
< 17 / 66 >

この作品をシェア

pagetop